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アメリカの人事・労務

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アメリカの人事・労務・社会保険

アメリカでの人事・労務・社会保険についてご案内いたします。

雇用管理における差別の禁止について

米国では、雇用上のあらゆる決定において差別を禁じる雇用機会均等法(Equal Employment Opportunities、略してEEO)が設けられています。これは、日本の男女雇用機会均等法よりも範囲が広く、連邦公民権法第七章(Civil Rights Act, Title Seven)に基づき、雇用に際しては、人種、肌の色、国籍、宗教、性別などで差別をすることが禁じられており、差別に敏感なアメリカ社会の様子を色濃く反映しています。

アメリカビジネスに関わる日本人は、このアメリカの差別との戦いの歴史をまずは勉強すべきです。そうしなければ、現地スタッフとの乖離は埋まらず、信頼や同胞の意識は芽生えないと思います。労務について記載する前に、まず皆様には依然として残る「差別」の存在と、大半のアメリカ人が持つ「差別」への嫌悪感と、その両面を併せ持つアメリカ社会について、認識を持っていただければと思います。キング牧師の「私には夢がある」で知られる公民権獲得に向けた米国で最も有名な演説の全文を読まれることをお勧めします。

採用面接に際して、差別の類に言及することは禁じられ、また、人事判断においては、能力、経験、勤務態度や勤務成績などの職務上の理由によって判断がなされるべきとされ、差別要因が加わることは固く禁じられています。最近では、過去の給与情報を聞くことも難しくなりつつあり、あくまでも希望の給与額を聞くに留める必要があります。

EEO(Equal Employment Opportunities)

米国の雇用機会均等法(equal employment opportunity)をいいます。この法律は1963年に成立し、まだ半世紀ほどしか経っていません。EEO成立の背景には、アメリカの差別との戦いの歴史が存在し、ケネディ大統領やキング牧師の命を懸けてまでの取り組み、そしてジェファソン大統領による公民権法などがこの法律の成立に重要な役割を果たしています。

EEOでは、人種、肌の色、国籍、宗教、性別、年齢、エイズ、アルコール中毒歴者、身障者、退役軍人、妊産婦などに対する雇用差別を禁止しています。

また、EEOCとは「雇用機会均等委員会(Equal Employment Opportunity Commission)」の略であり、1964年に公民権法に基づいて発足したアメリカの連邦政府機関です。

従業員の雇用について

アメリカでは、各州によって法律が異なります。
進出する州の法律をしっかりと理解し、危険回避しましょう。

会社も従業員も守る労務管理

雇用において共通している概念として、法律は必ずしも労働者を守るものでありません。
会社を守るものにもなり得るということを認識しておく必要があります。

また、州によっては労使間における互いの意志に基づく雇用が原則となっています。

英語では、Employment at Willと言い、従業員側がいつでも事前の報告なしに雇用契約を解約できる反面、雇用主側でも正当な理由さえあれば、あらゆる人事権を発動でき、いつでも従業員を解雇することができることを表しています。
ただし、どの州でも適用されるわけではないのでご注意ください。

雇用契約

アメリカも日本と同様に労使間において、雇用契約を締結します。

その契約書に記載された事項は、何よりも重視され、雇用者は契約期間や雇用形態などを保障しなければなりません。

つまり、契約期間を定めた場合は、雇用者が期間中の雇用を保証することになり、その間は、従業員を解雇することができません。

また、労働組合と契約を結んだ場合においても、雇用者は従業員を自由に解雇することはできません。

厚生労働基準法 -FLSA-

FLSAとは、The Faire Labor Standards Actといい、主に給与に特化してその平等性、最低賃金、残業代などについて規定している法律で、「公正労働基準法」と呼ばれています。

労働基準法といえば、日本の労働基準法のように従業員の労働に関するさまざまな取り決めが規定されていると思われがちですが、アメリカのFLTAはその範囲は狭く、企業自治の補助的役割を果たすためのものという位置づけです。

特に、EXEMPTと呼ばれる最低賃金や残業代の

従業員の給与

アメリカも日本と同様に従業員の給与について規定が定められています。

なお、海外赴任者の給与を決定する方法は「購買力補償方式」「併用方式」「別建方式」の3種類がありますが、いずれを採用するにしても、アメリカでの給与については現地での規定が優先されることになります。

最低賃金

アメリカでは各州の法律において、最低賃金が定められています。

雇用主は従業員に支払う時給について、この最低賃金を下回ることは許されていません。

ただし接客業などの業務においては一部例外があり、一定額以上のチップを得る労働者に対しては、最低賃金が別途定められています。
業種により異なる最低賃金が設定されているため、ご注意ください。

残業代

アメリカでは、週の所定労働時間は40時間と定められています。

40時間を超える残業については、給与の150%を残業代として支給しなければなりませんが、1日8時間を超えた場合や休日労働をしたからといって、その度に残業代を支払う必要はありません。

あくまでも1週間における合計就労時間を基に算定されることになります。

残業代の支給除外

アメリカでは、必ずしも残業代を支払わなければならないわけではありません。
一定の者は残業代の支給を控除されています。

残業代の支給を控除されている者は、一定レベル以上の重役、管理職や専門職、あるいは歩合制の販売員などが挙げられます。

  • 役員の場合

(残業代除外条件)

  1. 基本給が一定額以上であること
  2. ある一定のポジションについて2人以上の者を指揮命令下に置いていること
  3. 従業員の雇用や解雇の権限を有する者
  • 管理職の場合

(残業代除外条件)

  1. 基本給または能力給が一定額以上あること
  2. 業務が雇用主や顧客管理、または一般業務に関連する事務または非肉体労働の遂行であること
  3. 職務に重要な問題に関する自由裁量および独自の判断の行使が含まれる場合
  • 専門職の場合

学職専門職と創造専門職に分かれます。

  • 学職専門職

(残業代除外条件)

  1. 基本給または能力給が一定額以上あること
  2. 知的な業務や自由裁量および独自の判断の行使を要するものを含む業務であること
  3. 高度な知識が科学分野または学職分野であり、長期課程の専門的知識教育によって取得されたものであること
  • 創造専門職

(残業代除外条件)

  1. 基本給または能力給が一定額以上あること
  2. 芸術的または創作的な知的創造能力を要とする分野において、発明、創造、独創性、または才能を必要とする仕事である場合
  • 総年収が10万ドル以上の高報酬の従業員

ただし上記の除外対象となっている役員、運営管理職、あるいは専門職のいずれか1つに従事している場合に限るとされています。

  • 歩合制の販売員
  1. 小売店やサービス業で就労する者
  2. 通常の賃金が最低賃金の1.5倍を超え、且つ全収入の半分以上を歩合制が占める者

社会保障番号(SNN)

2015年に日本でもマイナンバー法が制定されましたが、アメリカでも同様の法律により、国民が9桁の個人情報番号で管理されています。

 

アメリカの市民や永住者だけでなく、外国人労働者に対しても、社会保障番号(SSN)の発行をしなければなりません。

元々は、アメリカの社会保障に加入した際に取得する番号でしたが、現在は納税者番号や身分登録番号としても使用されています。

社会保障番号は、銀行口座を開設する際や運転免許証の取得に際も必要となります。

 

駐在員は、社会保障局で社会保障番号を申請しなければなりません。

しかし、社会保障局は移民局の情報を使用しているため、入国後すぐであれば、まだシステムにデータが反映されておらず、しばらくの期間は待つ必要があるかもしれません。

Employment-at-will

直訳すると、「意志に基づく雇用」となりますが、これだとまったく理解できません。

説明を付け加えるならば「従業員も企業も、理由の如何を問わず、離職し、あるいは解雇することができる雇用制度」というような意味になります。

これだけを聞くと、「いつでも解雇できる」と捉えがちですが、確かに解雇はできますが、訴訟が多いのも事実です。

企業はいつでも従業員を解雇できるのか?

通常、どんな会社でもハンドブックやオファーレターには以下のような文言が記載されています。

You are free to end your employment with XYZ Company at any time, with or without reason. Likewise, XYZ Company has the right to end your employment, or otherwise discipline, transfer, or demote you at any time, with or without reason.

この文章を鵜呑みにすると、「従業員も企業も、理由の如何を問わず、離職し、あるいは解雇することができる」ということで、企業はいつでも解雇ができると解釈できますが、問題になるのは「理由の如何を問わず」というところです。確かに、理由を問わないのは事実ですが、ここに差別の問題が入っている場合は、別問題となり、訴訟に発展することになります。アメリカの裁判は陪審員制度ですから、裁判になって「差別」が解雇要因に入っていると、企業は必ずと言っていいほど負けてしまいます。

そのため、「この解雇は差別ではないんだ」ということをいかにして証明するかを常に記録しておく必要があると言えます。

レイオフ

レイオフ(lay-off)とは、企業が業績悪化した際に、一時的な人件費を抑制するために会社都合で従業員の再雇用を前提に一時的に解雇をすることをいいます。

一般的に、なるべく勤続年数の短い労働者からレイオフし、再雇用時には、勤続年数の長い労働者が優先して再雇用することになります。そして、レイオフ期間中は、人材の流出を防止することを目的に、一定の手当を支給している企業もあります。

日本では馴染みの薄いレイオフですが、アメリカではレイオフを効果的に活用することで、熟練工の経験やスキル・ノウハウの流出を最小限にとどめることができるとされています。

そのため、製造業を中心に活用されることが多く、小売業やサービス業のようにスキル・ノウハウが企業に依存していない業界では、経営悪化の際にレイオフではなく解雇を選択する傾向があります。

解雇における留意点

レイオフであれ、リストラであれ、解雇をするということは、相手がいる話であり、アメリカではその解雇理由に合理性がないと判断された場合は会社と元従業員との間で係争が繰り広げられることになります。

しかも個人から多額の報酬を取りにくいローファームは、過去の解雇者まで巻き込んで、集団訴訟に持ち込むという事態にまで発展するケースもあります。

解雇を前提とした働き方もやむなしとしていますが、あくまでも解雇には「合理的な理由」がなければなりません。そのため、採用時にはどういった場合に解雇されるのかを予め明示しておかなければなりません。

また、数か月分の給料を退職金として支払うなど、「package」と呼ばれる退職条件をどのように設定するのかも、大きな焦点となります。給料が高い従業員はスキルやノウハウもそれなりに持っているため、そういう人を解雇するとなると、企業は無傷で済むわけではありません。実際に、解雇したマネージャーを再雇用することもあったりしますし、どのように従業員とお別れをするのかは非常に重要なマネジメントスキルといえます。

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